DOCTOR INTERVIEW
循環器内科 / 患者サポートセンター
酒井 哲郎副院長
循環器内科部長
患者サポートセンター長
TETSURO SAKAI
心臓と血管の専門医療
循環器内科では心臓や血管の病気を専門に扱います。具体的には狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、心臓のポンプ機能が低下し全身に血液を送れない状態になる心不全、心臓の脈が乱れた状態の不整脈、下肢閉塞性動脈硬化症などの未梢の血管疾患も治療の対象です。これらの病気の早期発見·治療のための検査も行っています。
専門の外来としては、循環器疾患全般を主に診療する一般外来のほかにペースメーカー植込み後の定期的管理を行うベースメーカー外来、心筋梗塞や心不全からの日常生活活動度の回復と再発予防を目的とした心臓リハビリテーション外来を設置しています。
2024年7月現在、6名の循環器内科医のうち日本循環器学会認定循環器専門医が5名、日本心血管インターベンション学会心血管カテーテル治療専門医が1名、同認定医が3名おり、専門性の高い医療を提供できるようスタッフの充実化を図っています。
受診のケースと24時間の緊急体制
受診される患者さんのパターンは様々なケースがあります。胸痛・動悸・息切れ・失神・めまい·足のむくみなどの自覚症状があり、ご自身で受診される方。自覚症状がなく、健康診断で高血圧や心電図異常などの異常を指摘された方。開業医の先生からご紹介いただいた方、救急で搬送されて来られる方などが挙げられます。
当院では24時間、緊急検査や治療を行える体制を整えています。胸が締め付けられるような圧迫感がある、冷や汗や吐き気を伴う痛みがある場合は、心筋梗塞など緊急性の高い症状です。若い方でもこれらの症状が現れる場合があります。緊急の症状が見られる場合は、当院救急外来までご連絡ください。
患者さんの負担を抑えたカテーテル治療
カテーテル治療は心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に対する有効な治療です。カテーテル治療は細い管である「カテーテル」を心臓を栄養する冠動脈との入口まで挿入し、血管内にガイドワイヤーという細く柔らかい金属の管で病変部を通過させ、それを通して風船やステント(金属製の網状チューブ)のついたカテーテルを病変部に到達させ、血管を内側から広げる治療法です。カテーテル治療の最大のメリットのひとつは、局所麻酔で行うため侵襲が少なく、患者さんの負担が軽減されることです。さらに薬物治療に比べて確実な効果が得られやすいという特長もあります。患者さんによって血管の太さや硬さ、詰まりの度合いが異なるため、個々の病変を正確に把握し、慎重にシミュレートしてステント以外にもDCAやロータブレター、ショックウェーブなどの適切な手法を用いて治療しています。患者さんの苦痛を最小限に抑えつつ、合併症のリスクを低減させるため、看護師を含むスタッフと協同し、円滑な治療を実践しています。
不整脈に関しても、カテーテルアブレーションという不整脈の原因となる場所を選択的に焼灼する治療を行なっています。昭和大学から不整脈専門医をお招きして行っており、連携を図りながら患者さんに満足していただける医療の提供を目指しています。
チームで行う心不全治療
現在、当科で最も多く診察する病気は心不全です。国内の患者数は約120万人で、今後も増加が見込まれており、2030年には130万人に達すると推計されています。
心不全は正確には病名ではなく、心臓に異常が生じ、その結果として心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器に必要な血液を適切に供給できなくなる状態を指します。心不全は心臓に関連するさまざまな病気(心筋梗塞、弁膜症、心筋症など)や高血圧などが原因で心臓の動きが悪くなったり、心臓への負担がかかることにより、最終的に発症する症候群です。
高齢者の増加に伴い、心不全患者が大幅に増加することを「心不全パンデミック」と呼んでいます。特に高齢者においては、心臓の治療だけではなく患者様の生活状況に合わせた、治療や介入が必要になってきます。そのために当科では「心不全メンテナンスチーム」を立ち上げました。心不全メンテナンスチームは医師以外に、看護師・理学療法士・栄養士・薬剤師・ソーシャルワーカーなどさまざまな専門家が集まったチームです。単なる症状の改善だけでなく、生活の質を向上させることをゴールと考え、身体的側面だけでなく、精神的·社会的にも幅広く介入することを目的にチームでケアを行っています。虚血性心疾患と心不全
心臓病は生活習慣と深い繋がりがあります。高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙・肥満などの危険因子を持っていると、急性心筋梗塞や狭心症になりやすい傾向があります。当院では生活習慣のコントロール、禁煙指導、栄養指導にわたる幅広い診療を心がけています。
個々に合わせたリハビリテーションを提案
当院では心臓リハビリテーションにも積極的に取り組んでいます。心臓リハビリテーションの目的は、心臓病患者さんの社会復帰や病気の再発・悪化を予防することです。運動療法、食事アドバイス、禁煙などの生活の見直しを行い、病気に対する正しい知識を理解していただく必要があります。
2022年に心臓リハビリテーション外来を新設し、当院に通院している方だけでなく、地域の開業医の方の患者さんも受けられるシステムを整えています。適度な運動は体力の向上や筋力の維持、さらに心臓の負担を減らすことにも繋がりますので、積極的に行うことが薦められています。患者さんそれぞれに最適な心臓リハビリテーションを一緒に考え、社会復帰に向けて一緒に歩んでいきたいと思います。地域の方々にもぜひ利用していただければと思います。
治療後の生活まで包括的なサポートを行う
手術や治療で病気が良くなったとしても、高齢者の方はご自宅に帰っても歩けない、食事もできないとなると生活の質が良くなったとは言えません。高齢者の方は筋力や運動機能の低下により、術後の ADL(Activities of Daily Living:日常生活能力)が悪化するリスクがあります。術前には積極的な栄養指導やリハビリ介入などを行い、術後はソーシャルワーカーに協力を求め、施設への受け入れを検討するなど、包括的なサポートを病院全体で行っています。
医師として病気を治すことが第一の使命ですが、患者さんのパーソナリティや社会的な状況などを考慮しながら治療を進める時代になってきています。これを単なる病院の取り組みとしてではなく、地域全体に広げていくことが今後の課題だと考えています。
患者さんの些細な変化でもご相談ください
日頃よりお世話になっている地域の先生方には、患者さんの日常の小さな変化や症状でもお気軽にご紹介いただきたいと思います。胸痛や息切れなどの分かりやすいサインだけではなく、前と比べて呼吸が変わってきたと感じるなど、些細な変化も共有していただけると大変助かります。まだ大きな治療が必要ではないというステージの患者さんも薬物療法や運動、食事のアドバイスを含めてご提案させていただきます。
地域の開業医の先生方とコミュニケーションを取りながら治療を進めていくことが重要だと思っておりますので、心不全のサインがある場合には、遠慮せずに送っていただけるとありがたく思います。
酒井 哲郎
副院長・循環器内科部長・患者サポートセンター長
- 1986年 昭和大学医学部卒業
- 1996-97年 テキサス大学ガルベストン校 留学
- 2013-2016年 昭和大学病院循環器内科准教授
- 2013年 日本鋼管病院 循環器内科部長
- 2018年 日本鋼管病院 副院長
- 循環器内科
- 心不全
- 虚血性心疾患
- 日本内科学会認定医内科医・総合内科専門医・指導医
- 日本循環器学会循環器専門医
- 日本集中治療学会集中治療専門医
- 日本心血管インターベンション学会認定医
- 身体障害者福祉法15条指定医(心臓機能障害)
- 難病指定医