DOCTOR INTERVIEW
呼吸器内科
田中 希宇人部長
KYUTO TANAKA
軽症から重症までの幅広い呼吸器疾患に対応
呼吸器内科では、のど、気管、気管支、肺など、呼吸器に関連する疾患を専門的に扱います。具体的には、肺がんやCOPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)、気管支ぜんそく、肺炎、感染症やアレルギーなど、あらゆる呼吸器疾患に対応しています。また、近年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても、当科主導で診療・治療にあたっています。
呼吸器疾患の患者さんの中には、急に状態が悪化し、救急対応が必要となることもあります。近年、当院の救急体制はより強化され、HCU(High Care Unit:高度治療室)と呼ばれる、専門的な治療や看護を集中的に行う病床を開設いたしました。このことにより、緊急入院を含む、軽症から重症までの幅広い患者さんの受け入れが可能となりました。
患者さんの苦痛をできる限り和らげる
肺の病気に関する治療にあたっては、医学的に最も優れていると検証された、標準治療といわれるゴールドスタンダードな治療法をまずご提案しています。そして患者さんの生活環境やご要望などを伺ったうえで、患者さんごとに適切な治療法を選択しています。
特に肺の病気の場合、多くの患者さんが痛みや苦しさを感じ、つらい思いをされています。そのような患者さんの痛みや苦痛をできるだけ和らげ、排除できるような治療を優先的に考えています。
この川崎地域での勤務も長く、市立病院や大学病院の先生方と幅広い繋がりがありますので、当院で対応が難しい検査や疾患の場合は、近隣の病院とも適宜連携をとることができます。
地域としても医療的ニーズのある診療科
他の診療科に比べ、全国的に呼吸器内科の医師の人数は少ないのですが、当院の呼吸器内科では7名の医師が在籍し、専門的なチーム体制で診療にあたっています。市中の病院で、これだけ呼吸器内科医がそろっていることは非常に珍しいことです。
当科には、川崎市や横浜市、大田区などから多くの患者さんがいらっしゃいます。特に川崎は工業地帯のため、肺の病気の患者さんが多い傾向にあります。新型コロナウイルス感染症に加え、地域としても医療的ニーズのある診療科であると実感しています。
外来では専門医4人体制で対応し、入院は宮尾副院長と私の指導のもと、5人のレジデントが対応しています。患者さんに寄り添う立場・体制で、日々の診療にあたっている強みがあると自負しています。
肺がんにおいても幅広い治療の選択肢
20年ほど前は、肺がんや喘息などの呼吸器疾患の治療法は限られており、患者さんのニーズに十分に応えられていない状況でした。通院し続けても息苦しさが改善されない、緊急受診・入院をしなくてはならないといったことが多かったのです。
近年は治療の選択肢も増え、肺がんにおいても、様々な治療が可能となりました。以前に比べ、元気に長生きされる患者さんが増加しています。呼吸器内科医としても、肺疾患の患者さんのための選択肢が増えてきていることを嬉しく思っています。
家族の世話がきっかけで、医療に関心を持つ
私が医師という職業を意識したのは高校生の時です。私の妹は障がいを持っており、妹のリハビリや介護を幼い頃から手伝っていたこともあって、無意識のうちに医療を身近に感じていました。将来の進路を決める高校生のタイミングで、医療に携わりたいということを再認識し、医学部に進みました。
臨床研修の期間において、呼吸器内科で研修する機会に恵まれました。先輩の先生方が肺がんや喘息、COPDなどの肺の病気に苦しむ患者さんたちと親身に、そして献身的に接している姿を見て、自分もそのような医師になりたいと思いました。肺の病気は命にも関わる重大な疾患ですので、そのような診療に携わりたいという思いもあり、呼吸器内科を専門にすることを決意しました。
SNSを活用し、多くの患者さんに医療情報を発信
数年前から正しい医療情報を多くの人に届けたい、わかりやすく伝えたいという思いのもと、「キュート先生」という名前で、SNSでの医療情報の発信に力を入れています。
SNSでの発信を始めたきっかけは、私が病棟や外来で患者さんに対応できる時間には限りがあることに、歯がゆい思いを抱いたためです。肺がんや肺炎、COPDなどの肺の病気は命にかかわる病気でありながら、患者さんの人数に対して、診療する専門医の人数が少なかったのです。できるだけ多くの患者さんに正しい情報を提供するための方法として何か出来ないかと考え、SNSを使い始めるようになりました。
自分が学んだ医療知識や、学会や研究会でまとめた資料なども、その時だけで終わらせてしまうのはもったいないと思います。活用することで自分の学びにも、患者さんの学びにもなるのであれば、良いことばかりだと思っています。
地域で切れ目のない医療体制を継続
地域の先生方には、いつも多くの患者さんを支えていただき感謝しております。肺の疾患の患者さんは数多くいらっしゃいますし、ときに重症になってしまう患者さんもいらっしゃることと思います。
また近年は、肺がん診療の専門性が非常に高くなってきています。肺がんの罹患数は年々増加しており、現在日本国内の一番多い死因は肺がんです。治療の選択肢も幅広くなってきており、検査の難易度も上がっています。個別化医療が進み、一人の患者さんに対して、どの治療が効果的であるのかが、非常にわかりづらくなってきているのです。
当科は呼吸器を専門にしている医師が揃っておりますので、検査や治療など、患者さんのことで少しでも困ったことがあれば、お気軽にご相談いただければと思います。状況に応じて適切な医療機関へのご紹介や、病気や病態の評価やフィードバックもさせていただきます。
地域の先生方と協力しながら、この地域全体の患者さんに対し、切れ目のない医療を目指していきます。当院で対応するべき疾患、病態の治療に関しては責任を持って診させていただきます。一方で状態が落ち着いた患者さんや、呼吸器以外の診療にあたっては、ホームドクターや地域の開業医の先生方に診ていただく、といった連携体制を今後も続けていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
田中希宇人
呼吸器内科部長
- 東京都出身
- 2005年 慶應義塾大学医学部卒
- 2005年 慶應義塾大学病院 初期臨床研修医
- 2007年 慶應義塾大学病院 内科
- 2008年 けいゆう病院 内科
- 2009年 慶應義塾大学医学部 呼吸器内科
- 2013年 川崎市立川崎病院 呼吸器内科 副医長
- 2017年 川崎市立川崎病院 呼吸器内科 医長
- 2021年 日本鋼管病院 呼吸器内科 医長
- 2022年 日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
- 医学博士
- 総合内科専門医・指導医
- 日本呼吸器学会専門医・指導医
- 日本呼吸器内視鏡学会専門医
- 臨床研修指導医
- がん治療認定医