ぜんそく
ぜんそく死
このような話題を紹介するのは不適切かもしれませんが、ぜんそく診療を行う医療者としてぜひ多くの人に知っていて欲しいことがあります。最新の統計でも「1年で約1000人の方が日本でぜんそくによって死亡している」という事実があります(2022年 厚生労働省人口動態統計では、ぜんそく死は1004例)
ぜんそくによる死亡は、治療の進歩、ガイドラインの策定、衛生環境の整備など様々な要因で近年減少しています。ただし短時間作用型β刺激薬と呼ばれる発作治療薬の定期的な使用により、ぜんそくのコントロールを悪化を招いてしまうことがあり注意が必要です。もちろん吸入ステロイドをちゃんと指示通りに使って、それでも症状がツラい場合に発作治療薬を時々使用する分には全く問題がありません。発作治療薬だけを定期的に使用することが良くないのです。それは定期的に使用する気管支拡張薬である、長時間作用型β刺激薬でも同様のことがあり、やはり吸入ステロイドをしっかり使うことが重要になります。
大人のぜんそくによる死亡は、発作後1時間以内に命に関わってしまう方が13.6%、3時間以内が29.7%であり、急に状態が悪くなってしまう方が思いのほか多いことが分かっています(日本アレルギー学会 喘息死特別委員会からの報告)。
もともと軽症のぜんそくであったとしてもぜんそく死に至ってしまう方もいらっしゃいますので、その点は医療者も患者さんもしっかり認識しておく必要があります。特に重篤な発作で入院歴のあるぜんそく患者さんはリスクになりますので、症状が落ち着いていても治療を怠らないよう注意が必要です。
私も病院に20年ほど勤めておりますが、ぜんそくが原因と考えられる症状で亡くなってしまった方を数人経験しています。その経験からこれからはぜんそくが原因で死に至ってしまう方を1人でも出したくないと強い思いがあります。
こうかん呼吸器は多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそく患者さんが通院する医療機関です。地域の中核病院としてぜんそく死にも適切に対応していく使命があります。ぜんそく症状で困っている患者さん、生物学的製剤を使用しても症状のコントロールできない患者さん、ぜんそくのクスリについて見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。生物学的製剤の治療選択、吸入など、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.18
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
テゼペルマブ(テゼスパイア®)
テゼスパイア®は気道の細胞下に存在するTSLPと呼ばれるサイトカインを抑える作用があります。ぜんそくの炎症に関わる大元に近い部分に効果があります。
12歳以上の成人では210mg/回、4週間ごとに皮下注射します。吸入ステロイドや他のぜんそく治療薬でも発作歴のあるぜんそく患者さんに対して、採血での好酸球の数や呼気NOの値に関わらず発作の発生を改善する効果が示されました(N Engl J Med 2021;384:1800)。実際は好酸球や呼気NOの値が高いほど効果が期待できます。特に好酸球の数、呼気NOの値、IgEの値の3項目が高い、「トリプルハイ」と呼ばれる患者さんでは、テゼスパイア®が劇的に効果を認めることがあります
実臨床ではトリプルハイのぜんそく患者さんにはまずテゼスパイア®を勧めております。花粉やホコリなどで症状が悪化するようなぜんそく患者さんにも多く活用しています。
まだ発売して1年程度のクスリですので、今後の実臨床でのエビデンスをしっかり注目していきたいと思っています。
こうかん呼吸器は多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそく患者さんが通院する医療機関です。今回紹介したテゼスパイア®も、当院では発売から1年で約30例の患者さんに処方しました。生物学的製剤を使用しても症状のコントロールがイマイチなぜんそく患者さん、ぜんそくのクスリについて見直したい、テゼスパイア®も一度試してみたい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。生物学的製剤の治療選択、吸入など、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.17
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
デュピルマブ(デュピクセント®)
デュピクセント®はIL-4受容体α鎖に結合し、IL-4、IL-13といったサイトカインを抑えるクスリです。IgEをつくる細胞も抑え、気道の炎症を鎮静化させることで効果を発揮します。12歳以上で、初回600mg/回(300mgの注射を2本)を皮下注射し、2回目以降は300mg/回を2週毎に皮下注射していきます。
吸入ステロイドや他のぜんそく治療薬でも年に1回以上の増悪(発作)をみとめるぜんそく患者さんを対象に、52週間(約1年間)でのぜんそく発作の頻度を抑える効果が示されました(N Engl J Med 2018;378:2486)。特に採血での好酸球の数が高いほど、呼気NOの値が高いほど、肺機能検査で調べられた1秒量が改善されることが知られています。
適切な外用薬でも効果が不十分なアトピー性皮膚炎、内服のステロイドや手術でもコントロールが難しい鼻ポリープのある慢性鼻副鼻腔炎の患者さんにも有効性が示されており、保険適応があります。
一般的には好酸球の高いぜんそくによく使用するクスリですが、好酸球が関係している鼻副鼻腔炎や鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎など、鼻やのどの炎症に対しても適応がありますので耳鼻科の先生方とも連携しながら診療します。幅広くぜんそくに関連する炎症を抑えますので、他の生物学的製剤(バイオ製剤)でも効果が不十分であれば一度デュピクセント®に変更して効果を試してみることもあります。
こうかん呼吸器は多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそく患者さんが通院する医療機関です。今回紹介したデュピクセント®を使用している患者さんも多くいらっしゃいます。生物学的製剤を使用してもコントロールがイマイチなぜんそく患者さん、ぜんそくのクスリについて見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。生物学的製剤の治療選択、吸入など、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.16
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
ベンラリズマブ(ファセンラ®)
ファセンラ®はIL-5受容体α鎖に結合して効果を発揮します。好酸球のアポトーシス誘導し血液中、気道中の好酸球を強力に抑えます。重症の好酸球が関わるぜんそくに適応があり、成人では30mg/回、初回・4週・8週後に皮下注射し、それ以降は8週間隔(2か月に1回)で皮下注射します。
吸入ステロイドや他のぜんそく治療薬でも2回以上の増悪(発作)歴のある好酸球性重症ぜんそく患者さんを対象にした臨床試験では、ファセンラ®で治療した患者さんは血液中の好酸球が300/μL以上の症例で、56週間(約1年)にわたって喘息発作の頻度を減らし、症状も改善しました(Lancet 2016;388:2128)。採血での好酸球の数が高いほどその効果が高まることが知られています。
また鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎に対しては、ポリープの縮小や症状を改善させたとの報告もあります(Clin Exp Allergy 2021;51:836)。今後、EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)に対しても保険適応が通るとされていますので、その効果が期待されているクスリです。
個人的には好酸球が強く関わるぜんそく、特に採血での好酸球の数が1000/μL以上のぜんそく患者さんにはファセンラ®を勧めていることが多いです。ファセンラ®を使うことにより、好酸球の数をゼロにするほどの効果が期待できます。またぜんそくに対して使っている経口のステロイド薬も減らせることが期待できますので、好酸球が暴れているような症例にはよい適応と考えています。ヌーカラ®でも効果が不十分な好酸球性ぜんそくではファセンラ®を試してみることもあります。
こうかん呼吸器は多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそく患者さんが通院する医療機関です。今回紹介したファセンラ®を含めて生物学的製剤を検討されているぜんそく患者さん、ぜんそくのクスリについて見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。生物学的製剤の治療選択、吸入など、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.13
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
メポリズマブ(ヌーカラ®)
2番目に紹介する難治性(なんちせい)ぜんそくに対して使用する生物学的製剤(バイオ製剤)は好酸球に効果の高いメポリズマブ(ヌーカラ®)です。
ヌーカラ®はIL-5という好酸球の増加に関係するサイトカインに特異的に結合して、血液中、喀痰・気道粘膜での好酸球を減らす効果が期待できます。
6-12歳では40mg/回、4週毎に皮下注射。12歳以上では100mg/回、4週毎に皮下注射します。
高用量の吸入ステロイドや他のぜんそく治療薬を用いても年に2回以上の増悪(発作)歴のある好酸球性重症喘ぜんそく患者さんを対象にした臨床試験では、ヌーカラ®を使用した患者さんが32週間でのぜんそく発作の頻度を有意に抑えるという効果が示されました(N Engl J Med 2014;371:1198)。採血での好酸球の数が高いほど、その効果が高いことが分かっています。ヌーカラ®を投与すると採血での好酸球は速やかに減少します。ただしヌーカラ®を使用しても呼気NO値は下がりにくいことも知られています(N Engl J Med 2009;360:973)。
通常の治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)という難病に対しても保険適応があり、ぜんそくに使う用量の3倍である1回300mgを4週ごとに皮下注射して治療します。
実際の診察室では好酸球が強く関わるぜんそくにヌーカラ®を活かしています。EGPAに対しても活用できるように心がけています。
こうかん呼吸器は多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそく患者さんが通院する医療機関です。好酸球が暴れているような好酸球性ぜんそくの患者さんも多くいらっしゃいます。今回紹介したヌーカラ®を含めて生物学的製剤を検討されているぜんそく患者さん、ぜんそくのクスリについて見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。生物学的製剤の治療選択、吸入など、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.12
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
オマリズマブ(ゾレア®)
ここからは難治性(なんちせい)ぜんそくに対して使用する生物学的製剤(バイオ製剤)を具体的に紹介していきます。
まず血液中のIgEを抑えるオマリズマブ(ゾレア®)です。ゾレア®は血中遊離IgEのCε3に結合し、高親和性IgE受容体とIgEの結合を阻害するヒト化抗IgEモノクローナル抗体です。I型アレルギー反応を抑制しIgE陽性細胞を減少させます。難治性・重症の好酸球が関わるようなタイプ2炎症と呼ばれるぜんそく患者さんで、特に血液中のIgEの値が30-1500 IU/mLの方に適応になります。
6歳以上の小児・成人に75-600mg/回、2週または4週毎に皮下注射するクスリです。ただし通年性の抗原感作があるにも関わらず、IgE値が上記の範囲内に収まらず、ゾレア®の適応から外れてしまうことがあります。
ゾレア®の臨床的な効果として、このクスリを使うことによってぜんそくの増悪(発作)を43%減少させた効果が臨床試験で示されています(Chest 2011;139:28)。ゾレア®が高い効果を示す患者さんとしては、採血での好酸球の数が高い方や呼気NOの値が高い方とされています(Am J Respir Crit Care Med 2013;187:804, Allergy 2016;71:1472)。
ゾレア®はぜんそく以外にも季節性アレルギー性鼻炎、特発性慢性蕁麻疹にも有効で保険適応があります。またABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)やNSAIDs過敏ぜんそく、好酸球性副鼻腔炎や鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎などへの有用性も報告されています。
若い頃から患っているアトピー型ぜんそく、アレルギー性鼻炎や花粉症、慢性蕁麻疹を合併した難治性ぜんそく患者さんにゾレア®の効果を期待しています。好酸球や呼気NO値がそれほど高くなく、IgE値が至適範囲にある場合にはゾレア®が選ばれることが多いです。先日食物アレルギーに対するオマリズマブの効果についての論文も報告(N Engl J Med. 2024;390:889)されておりましたので、食物アレルギーを持っているぜんそく患者さんもよい適応かもしれません。
こうかん呼吸器は多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそく患者さんが通院する医療機関です。生物学的製剤(バイオ製剤)を使用している患者さんも数多くいらっしゃいます。今回紹介したゾレア®を含めて生物学的製剤を試してみたいというようなぜんそく患者さん、ぜんそくのクスリについて見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。生物学的製剤の治療選択、吸入など、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.11
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
ぜんそくに対する生物学的製剤(バイオ製剤)
難治性(なんちせい)ぜんそくに対して使用する生物学的製剤(バイオ製剤)について紹介していきます。
現在、重症ぜんそく・難治性ぜんそくに対して5種類の生物学的製剤が使用可能です。一般的には好酸球が関わるようなタイプ2炎症の強いぜんそく患者さんに効果が高いとされています。ぜんそくの炎症に関わる、IgE、IL-5、IL-4、TSLPに対する生物学的製剤が実際の現場で使われています。アトピー型のぜんそくではオマリズマブ(ゾレア®、IgE抗体)、好酸球が高いようなぜんそくではメポリズマブ(ヌーカラ®、抗IL-5抗体)やベンラリズマブ(ファセンラ®、抗IL-5受容体α抗体)、IgEや好酸球数に関わらず使用可能なでデュピルマブ(デュピクセント®、抗IL-4,13抗体)やテゼペルマブ(テゼスパイア®、抗TSLP抗体)はぜんそく症状やQOLを改善し、ぜんそく増悪(発作)を減らすことが知られています。これらの生物学的製剤は飲み薬や点滴の全身性ステロイド薬よりも優先して導入すべき長期管理薬とされています。
[表:重症/難治性喘息に対する生物学的製剤(喘息診療実践ガイドライン2024)]
こうかん呼吸器は多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそくの患者さんが通院している医療機関です。生物学的製剤(バイオ製剤)も数多く処方経験があり、呼吸器内科医だけでなく、薬剤師さんや外来看護師さんたちも処方に大変慣れています。ぜんそく症状でこまっており生物学的製剤の使用を検討している方、ぜんそく治療について見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。吸入薬や生物学的製剤の治療選択を含めて、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.10
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
「難治性ぜんそく」ってナニ?
難治性(なんちせい)ぜんそくとは、症状のコントロールに
-高用量吸入ステロイド(ICS)
-気管支拡張薬(β刺激薬・抗コリン薬・テオフィリン製剤)
-経口ステロイド(OCS)
-各生物学的製剤
などのぜんそくの治療薬をいくつも必要とするぜんそく、またはこれらのクスリでもコントロールができないぜんそく、とされています。そのような患者さんが受診された場合には、ぜんそくの診断が正しいかどうか、他の病気を一緒に抱えていないかどうかなどを考えながら診療にあたっています。治療が難しいぜんそく患者さんでは、
-鼻/副鼻腔疾患・肥満・アスピリンぜんそく・COPDなどの併存症の診断と治療
-アレルゲン・NSAIDs・β遮断薬・タバコの煙など、ぜんそくを悪化させる要因からの回避
-服薬がしっかりできているか、吸入がちゃんとできているか
をしっかり確認します。
難治性ぜんそくに対しては生物学的製剤といった注射のクスリが使えることがあります。その治療選択に関しては患者さんの状態、採血や肺機能の結果、鼻疾患や皮膚疾患などを総合的に診て決めています。ガイドラインからは主に「採血での好酸球の数150/μL」、「呼気NO 25ppb」「通年性抗原検査のありなし」を目安に決めていることが多いです。
好酸球の高いぜんそくであれば、全ての生物学的製剤が適応となりますが、ヌーカラ®やファセンラ®といった好酸球を主に抑えるIL-5を中心とした治療を選択します。また好酸球の数が低ければ、呼気NOの値とIgEの値をみます。好酸球の関係する副鼻腔炎や鼻ポリープなどの鼻の病気、アトピー性皮膚炎があれば、デュピクセント®といったIL-4抗体やゾレア®といったIgE抗体を中心に治療を選択することが提案されています。好酸球の値も呼気NO値もIgE値も全て高いような場合には、一番新しい抗TSLP抗体テゼスパイア®を選択していることが多いです。
こうかん呼吸器は数多くの難治性ぜんそく・重症ぜんそく患者さんを診ている神奈川県内でも有数の医療機関です。生物学的製剤(バイオ製剤)といったぜんそくの根本を抑えるような治療も数多く処方しており、呼吸器内科医だけでなく、薬剤師や看護師も処方に慣れています。長引くせきや息切れ、ぜんめいの症状で困っている方、治療薬について見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。生物学的製剤の治療選択を含めて、ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.9
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
ぜんそくの通常の治療薬
喘息に必要なクスリは普段使う「長期管理薬」と症状が悪化した時に使う「増悪治療薬」の2種類に分けられます。長期管理薬は普段継続的に使用しぜんそくをコントロールして症状を落ち着かせるクスリとして位置づけられています。長期管理薬として重要な吸入ステロイドと気管支拡張薬について紹介します。
1)吸入ステロイド
長期管理薬で最も大事なのは「吸入ステロイド」です。
ステロイドを吸入することにより、気道の炎症を抑え、ぜんそく症状を軽くしたり、発作を起こしにくくしたりします。副作用としては声がれ(嗄声・させい)や口の中にカビが生えることがありますが、うがいで抑えられることがほとんどです。
2)気管支拡張薬
次に大事なのが「気管支拡張薬」です。これも多くは吸入剤です。「β刺激薬(べーたしげきやく)」と「抗コリン薬(こうこりんやく)」の2種類があります。いずれも気管支を広げたり、気管支が狭くなるのを抑えたりする効果がありますので呼吸が楽になります。ただぜんそくに対して「気管支拡張薬」だけを使うことは、致命的な発作を起こす危険性がありますので、長期管理薬としては必ず吸入ステロイドと併用して使うことが一般的です。
β刺激薬は動悸や手の震えなどの副作用があり、抗コリン薬は緑内障や尿が出にくいなどの副作用が現れることがあります。クスリを使い始めてそのような症状が新しく出るようでしたら、主治医の先生とご相談下さい。
こうかん呼吸器には多くのぜんそく患者さんが通院されています。長引くせきや息切れ、呼吸がヒューヒューいうような場合で困っている方、ぜんそくかどうかしっかり調べたい、治療薬について見直したい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.6
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
ぜんそく(気管支喘息)を疑う症状
ぜんそくの診断には「ゴールドスタンダード」と言われるような客観的な指標はありません。つまりこの症状があったら「ぜんそく」とか、採血でこの数値が高かったら「ぜんそく」とかそのような指標がないことが、ぜんそく診療を難しくしています。いくつかのぜんそくを疑う症状や問診、診察での所見を総合的に判断して「ぜんそく」と診断します。
ぜんそくを疑う所見はいくつかあります。比較的特徴的なのは「ぜんめい(ヒューヒュー)」と「息切れ」です。それ以外にもせき、たん、胸の圧迫感など患者さんの訴えや症状は様々です。逆にぜんそく以外の病気でもぜんめい(ヒューヒュー)や息切れすることがありますので注意が必要です。そのような理由からはじめは「ぜんそく」だけと決めつけないで、他の病気がないか、しっかり診察していくことが重要になります。
ぜんそくの症状は、
- 1日のうちでも症状が変動する。季節によっても症状が変動する。
- 1日のうちでは、夜や早朝に悪化することが多い。
- 症状がかぜ・運動・天候の変化・強い臭気などで誘発される。
といった場合には「ぜんそく」である可能性が高いとされています。
特に繰り返すぜんめい(ヒューヒュー)がある場合には、ぜんそくらしさがさらに高まります。「喘息診療実践ガイドライン2023年度版」ではぜんそくを疑う症状の大項目が1つと小項目を1つ以上認めれば、ぜんそくを疑って診療せよ、という流れで考えられています。
こうかん呼吸器には多くのぜんそく患者さんの診療経験があります。長引くせきや息切れ、呼吸がヒューヒューいうような場合で困っている方、ぜんそくかどうかしっかり調べたい、といったご希望のある方はこうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.5
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人のインタビューはコチラ
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長 田中 希宇人の書籍『ぜんそく・COPDポイント解説』はコチラ
ぜんそく(気管支喘息)ってどんな病気?
ぜんそく(気管支喘息)は、ガイドラインでは「気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄による喘鳴、呼吸困難、胸苦しさや咳などの臨床症状で特徴付けられる疾患」と定義されています。空気の通り道に慢性的な炎症が起こり、せき、ヒューヒューといった音、息切れなどの症状が起こる病気、ということです。ただそんな病気はいくらでもありそうですよね。ぜんそくは「採血で、この値が高いだからぜんそく」とか、「こんな症状があるからぜんそく」とか、具体的な診断基準がありません。外来でも一発で簡単に「あなたはぜんそくです」と言い切ることが難しい病気です。何回もよくお話を聞いたり、聴診したり、検査したり、クスリの効果を診たりして総合的に、「ぜんそくらしさ」を突き止めていくことで、診断に結び付けていきます。ぜんそくのガイドラインでは、ぜんそくを疑う症状と共に、症状の日内変動や季節性、アレルギー性鼻炎がることや採血で好酸球が高いかどうかなどを総合的に判断するように書かれています。
またぜんそくの特徴である気道炎症や気道が敏感であること(気道過敏性)によって生じる気道狭窄やせきの症状は、自然に良くなったり悪くなったり、症状の波(可逆性)があることが多いです。ただ長いことぜんそくをわずらって、しかも適切な治療が行われない場合には、症状がクスリを使っても改善しないことがあります。医学的には、炎症が長引くことにより「リモデリング」と呼ばれる構造変化で気道が硬くなり、不可逆的に症状が続くこともあります。
こうかん呼吸器には多くのぜんそく患者さんが通院されています。中には複数のクスリを使ってやっとこさ症状が抑えられている方や、それでも時々ぜんそく症状で苦しんでしまう重症ぜんそく・難治性ぜんそくといった方が通われています。長引くせきや息切れ、呼吸がヒューヒューいうような場合で困っている方は一度こうかん呼吸器で相談頂ければ幸いです。ぜんそくの適切な診断と治療について丁寧に提案させて頂きます。
2024.12.4
日本鋼管病院 呼吸器内科 診療部長
田中 希宇人(たなか きゅうと)