ドクターインタビュー

DOCTOR INTERVIEW

患者さん、地域の先生との信頼関係を重視

歯科口腔外科

齋藤 知之部長

TOMOHIRO SAITO

顎口腔領域のあらゆる疾患に対応

歯科口腔外科では、一般歯科(虫歯、入れ歯、歯槽のう漏)以外の口腔顎(顔面)に生じる疾患治療を行っています。歯の破折や脱臼、顎顔面などの外傷、顎関節症、顎変形症、口腔腫瘍など、顎口腔領域のあらゆる疾患に対応しています。

外来診療では、地域医療機関で対応が困難な症例の二次医療機関として診療を行っています。基礎疾患をお持ちの患者さんや急性炎症時の処置についても、他科との連携のもとに幅広く行っています。

以前は一般歯科治療に特化をしていましたが、専門的な診療が必要な患者さんへ対応するため、2020年の4月からは完全に口腔外科に切り替わっています。虫歯や歯周炎などの治療、入れ歯の作製といった一般歯科治療は行わず、近隣の開業医の先生に診ていただいております。

顎関節症と顎変形症が専門

当科では現在、常勤医が2名、非常勤医が3名、衛生士が3名と受付スタッフのチーム体制で診療にあたっています。

口腔外科と聞くと多くの方が親知らずの抜歯を思い浮かべるかと思いますが、口の中で発生する疾患は多くあります。良性腫瘍から悪性腫瘍までさまざまな腫瘍が口腔内に生じることもありますし、細菌感染による顔の腫れなど入院を必要とするケースもあります。

口腔内のほか顎領域の治療も行います。その中でも私は、顎関節症と顎変形症を専門にしております。

顎関節症は顎の関節や顎を動かす筋肉に異常が起こり、口を大きく開くことができない、あごを動かすと変な音がする、といった症状が現れる病気です。顎関節症は外科処置に移行するケースは少なく、全体の数パーセントの割合です。症状が軽い場合は投薬やマウスピースなどの保存的治療を行いますが、関節が癒着している場合や関節円板というクッション部分が変形している場合には、内視鏡手術を行っています。

また顎変形症治療も当院の代表的な手術の一つです。

顎変形症は顔面の変形、特に顎の骨の位置や大きさの異常により、かみ合わせや発音などの機能異常を起こしてしまう疾患です。矯正治療だけでは良好なかみ合わせを得ることが困難な場合に、顎の骨切り手術を行います。

このような顎の機能異常(顎変形症)に対しては、高度で総合的な治療が必要となります。地域の矯正歯科医とも連携を取りながら、術後の経過観察も含めた診療を行っています。

患者さんの全身的な健康状態も考慮

2020年4月に歯科口腔外科としての診療がスタートし、手術実績件数は年々増加傾向にあります。顎関節症と比較すると顎変形症の手術件数が圧倒的に多く、全身麻酔件数では2022年度は初年度の3倍に増加いたしました。

とくに手術においては、麻酔科、耳鼻科、皮膚科などの他診療科とも連携をとり、チームとして診療にあたっています。また内科の先生にもご協力いただき、患者さんの全身的な健康状態も十分に考慮し一貫した診療を行っています。

患者さんにストレスを感じさせない診療がモットー

当科では『可能な限り患者さんの恐怖心を取り除き、笑顔で外来を去っていただく』ということを目標にしています。外科処置を要することに恐怖心を抱く患者さんは、多くいらっしゃいます。患者さんが納得して処置を受けられるように、治療内容や手術の目的を丁寧に説明することを常に心掛けています。

また、できる限り患者さんが何回も通院せずに済むような体制を整えています。大病院では何度も受診が必要であったり何ヶ月も予約が取れないことが多くありますが、当科ではできる限り時間をかけず、スムーズに手術に移行できるように心掛けています。

例えば、親知らずの抜歯では初診診察時に即日抜歯ができるように予約をお取りし、準備を整えています。患者さんにストレスを感じさせない診療をモットーにしています。

再建手術にも積極的に対応

当科では口腔機能再建と呼ばれる、先進医療も扱っています。口腔機能再建とは、腫瘍や外傷などによって顎を失ってしまった際に、損なわれた機能や形態を高いレベルで回復し、できる限り治療前の生活に戻っていただくことを目的とする治療です。

具体例を挙げると、右側の顎が欠損している場合、3D-CTを撮影し左側の顎の形状をミラーリングします。これを基に3D模型を作成し、インプラントを用いて顎の形状を元の状態に戻すのです。このような再建手術にも積極的に対応することで、患者さんの生活の質の改善に貢献できると考えています。

地域の先生方との信頼関係を大事に

地域医療機関から患者さんをご紹介していただく際には「顔の見える診療」を大切にしています。面識のない医師に患者さんを突然紹介していただく、ということは難しいと思っています。診療内容や過去の症例数を示すことも大事ですが、まずは信頼関係を築いていくことを重視しています。目と目を合わせて話をしながら、患者さんの状態に適した治療プランを一緒に考えていければと思います。

特に全身疾患をお持ちの患者さんでは、総合病院の口腔外科で治療が必要になるケースが多くあります。このような基礎疾患をお持ちの患者さんも、当院では基本的にお断りすることなく、診療にあたっています。

また緊急の患者さんに対しても迅速に対応しておりますので、何かお困りのことがあればご相談ください。

齋藤 知之

歯科口腔外科部長

齋藤 知之

歯科口腔外科部長

経歴
  • 東京都出身
  • 1997年 鶴見大学歯学部歯学科卒
  • 1997年4月〜1998年3月 鶴見大学歯学部口腔外科学第一講座 入局
  • 1998年4月〜2004年3月 横浜労災病院歯科口腔外科 専修医
  • 2004年4月〜2006年3月 鶴見大学歯学部口腔外科学第一講座 助手
  • 2006年7月〜2007年3月 川崎市立多摩病院 歯科口腔外科 医長
  • 2007年4月〜2011年3月 鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科講座 助教
  • 2011年4月〜2019年3月 長野県厚生連 長野松代総合病院 歯科口腔外科 部長
  • 2019年4月〜 鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科講座 助教
  • 2022年4月〜 日本鋼管病院 歯科口腔外科 部長
資格
  • 日本口腔外科学会認定専門医