呼吸器内科

COPD・SASセンター

当院呼吸器内科では「薬物療法」はもとより、「リハビリ療法」による呼吸器疾患の治療を主眼としたCOPD・SAS(睡眠時無呼吸)センターを2013年2月に設立しました。

呼吸器リハビリのための入院プログラムも設けており、医師・看護師・栄養士・呼吸療法士・臨床工学士がチームとなって治療にあたる、全国でも数少ない「COPDに特化したリハビリ入院」を行っています。

当センターを訪れる患者さんも年々増加し、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の入院数は全国でも上位に位置します。

さらに、川崎地区での睡眠時無呼吸症候群に対する診療にも力を入れるべく体制を構築中で、近隣の先生方からも精密検査であるポリソムノグラフィ(PSG)やSAS管理のご依頼を多くいただくようになり、年々PSG検査数は増加しています。

現在、PSG機器の更新とともに、検査も毎日施行可能な体制を整えており、現時点では1週間程度の待機期間で検査を受けていただける状況です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

主に喫煙が原因で肺に炎症が起こる病気で、国内で推定500万人以上の方がCOPDだといわれています。
COPD 患者さんの90%以上に喫煙歴があるので、「肺の生活習慣病」、『タバコ肺』とも呼ばれており、タバコなどの有害な空気を吸い込むことによって空気の通り道である気道(気管支)が狭くなったり、酸素の交換を行う肺(肺胞)などに障害が生じます。
これは今まで肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気と同じで、主な症状として息切れや咳を中心とした病気をまとめた呼び方であるにすぎません。この病気に罹ると空気の出し入れがうまくいかなくなるので、通常の呼吸ができなくなり息切れが起こります。

COPDが進行すると呼吸器以外にも全身に影響が出てきます。着替えや入浴程度の動作でも息切れしてしまい日常生活を送ることが困難になりますし、せき・たん・息苦しさなどの症状が急激に現れる事が起こりやすくなります。
また、肺がんや動脈硬化、心不全・心筋梗塞、骨粗鬆症なども発症しやすくなります。

どのような人がCOPDにかかりやすいのですか?

長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから、COPDは「肺の生活習慣病」といわれ、社会的にも注目を浴びています。
タバコの煙には、約4,000種の化学物質が含まれています。この中には有害な化学物質も数多く含まれていますが、特に人体に悪影響を及ぼすのは、ニコチン・タール・一酸化炭素です。
タバコの煙に含まれるこれらの有害な物質が、気管支や肺を傷つけることにより、肺胞がこわれたり気管支に炎症が起きたりします。
また、受動喫煙によってもCOPDは発症することがありますし、喫煙以外の原因として大気汚染や職業的な塵埃や化学物質などがあります。
前述のように日本には500万人以上のCOPD患者さんがいると推定されており、2000年に日本国内で行われた調査では、40歳以上の男女のうち8.6%の人がCOPDの疑いのあることがわかりました。年齢別にみると、70歳以上の高齢者が最も多くなっています。

判断の目安になる症状

  • 40才以上で、タバコを吸っている、または吸っていた
  • 咳、痰がしつこく続く
  • 風邪を引いたときや、運動をしたときの喘鳴(ぜいぜいする)がある
  • 階段の昇り下りするときや坂道を上るときに息切れがする
  • 同年代の人と一緒に歩いていて、他の人より歩くペースが遅れてしまう

更に下記の症状がある人はCOPDが進行している可能性があります

  • 口すぼめ呼吸(体を動かして息切れを感じたときに、意識的に口をすぼめて呼吸する)
  • ビヤ樽状の胸部(胸の前後の幅が増大し、上体が樽のような形状になる)

当センターで行なっている治療や検査

COPDの治療にあたっては、治療の基本である「禁煙」、急性増悪を防ぐ「ワクチン接種」、息切れを和らげ運動能力を高める「薬物療法」、「呼吸器リハビリテーション」、息苦しさを和らげる「理学療法」、呼吸に関係する筋肉を鍛える「運動療法」、息切れが少なくなる日常動作を習得する「作業療法」、体重減少を防ぐ「栄養管理」、COPDが進行し低酸素血症になったときに導入する「在宅酸素療法」をひとつの流れとして、医師と二人三脚で治療を行っていきます。
呼吸器内科ではCOPDの入院患者さんに対して、医師や看護師からの医療の提供だけでなく、栄養士による栄養面での指導、呼吸療法士からの呼吸リハビリテーション指導、在宅医療担当者からの退院後の在宅での問題点解決へ向け、相談チームを作って、総合的に患者さまをサポートする体制が組まれています。
「肺年齢を測定してみたい方」、「自分もCOPDではないか?と心当りがある方」等、関心を持たれた方は 呼吸器内科外来の受診をお勧めします。

肺年齢を検査してみましょう

「肺年齢」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
当院では、気軽に「現在の自分の肺機能が何歳の人くらいのレベルにあるのか?」を理解していただくために、スパイロメーターという機械を用いて肺機能検査を行っています。この機械で測定された肺年齢は、肺の健康指導(疾患啓発、禁煙指導を含む)における目安として利用できます。
検査時間としては数分程度で、健康保険が適用される検査です。

COPD教育入院を行なっています
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は治る?

治療のために禁煙することは大前提ですが、気道を拡げて呼吸機能を改善する薬物療法、呼吸筋や全身の機能の衰えを防ぐ運動療法などを組み合わせて継続することで、良好な身体状態を長期間保つことができるようになります。

当院は全国でも数少ない「COPD(慢性閉塞性肺疾患)に特化したリハビリ入院」システムを行っています。
当院で行う「COPD教育入院」は医師をはじめとした各スタッフがチームを組んで行います。
さまざまな検査により、肺の現状評価や合併疾患を検索し、それらを多角的に評価し、呼吸リハビリの導入・摂取栄養の見直しを行います。
特に呼吸リハビリは、施設基準:呼吸器リハビリテーション(Ⅰ)を満たしており、呼吸器専門のリハビリテーションスタッフが呼吸困難の軽減や日常生活動作能力の改善を目的に、患者さん個々に合わせた呼吸法の指導・排痰・筋力トレーニング・持久力トレーニングをオーダーメイドで行います。注:これらは入院プログラムの一環であり、外来通院にて行うものではありません。

入院期間約2週間(予定)
費 用健康保険が適用されます。本人負担3割の場合、約15万円です。
※ 限度額認定証が適用となりますので、所得により上記金額から免除があります。
教育入院のながれ
1日目 リハビリ開始   リハビリテーション
入院時より毎日行い、退院後は週2回外来リハビリを継続して行います
2日目 肺機能検査

リハビリ風景
3日目
4日目 骨密度検査
5日目 呼吸リハビリ
DVD学習

「喫煙の影響」「息切れ解消のための呼吸の仕方」「最重症例の在宅酸素療法」などについてDVDを見ながら学習します
リハビリ
6日目 胸部CT撮影
7日目
8日目 血液検査
9日目
10日目 心エコー撮影
11日目 栄養指導

リハビリ風景
12日目
13日目 結果説明
14日目 退院

SAS(睡眠時無呼吸症候群)とは

睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome,SAS)と呼ばれ、睡眠中に喉の奥が閉塞して呼吸が一時的に止まってしまう病気があります。

無呼吸が起きると体が低酸素になり、苦しいために一時的に頭が覚醒、酸素が取り込まれると再度眠りに入るために無呼吸が起きる、というサイクルを夜中繰り返してしまう病気です。

睡眠時無呼吸症候群のサイクル

夜間の睡眠が分断されるため、寝ているはずなのに疲れが取れない、日中に眠い、朝の頭痛がするといった症状で気付く方もいますが、自覚症状がない方も多くいらっしゃいます。しかし体には負担がかかっており、動脈硬化を進ませたり、糖尿病の発症率を上げたり、不整脈を誘発したりといった合併症のリスクが上がります。また、自分では気付かない認知能力の低下を生じている可能性もあるため、車の運転や危険業務に携わる場合は業務上確認が必要な方もいらっしゃいます。

注意! こんな症状が起きることがあります

メタボリックシンドロームや心筋梗塞・脳梗塞

2000年代前半の研究において、成人男性では8~14%、成人女性では5~7%がこの病気を持っていると言われていましたが、肥満の増加などに伴って日本ではさらに有病率が上がっている可能性も高く、メタボリックシンドロームや心筋梗塞・脳梗塞といった有名な病気とも関与が強いため、大変注目されている疾患です。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸が疑われる方は、まず呼吸器内科医師の診察を受けていただき、
ご自宅での簡易検査、または1泊2日でのPSG(ポリソムノグラフィ:脳波、いびき、呼吸、心電図のセンサーをつけて夜間睡眠中の様子を解析します。)を行います。

そのうえでAHIという重症度を確認し、中等症以上の方にはCPAPというマスク
の治療を、軽症の方には歯科でのマウスピース作成をご案内しています。

また、耳鼻科と連携することで、軽症の方や移動が多い方の一時的な代替案と
して、Nasal stent(製品名:ナステント)という細い管を鼻に入れていただく新
しい治療も選択が可能となりました。

その他の併存症

当センターは、総合病院の中に設立されているため、必要に応じて各科での総合的な診療が可能な点も大きな特徴です。

例えば、夕方や夜間の安静時に、足がむずむずして不快な思いをしている方はいらっしゃらないでしょうか?
もしかすると「むずむず足症候群(RLS)」という病気の可能性があるかもしれません。
特徴としては安静時に足の不快感が生じ、動かしていると改善するというものです。
睡眠時に足がピクピクと動いてしまい、睡眠の質を低下させる「周期性四肢運動障害(PLMD)」という病気が合併することもあります。

これらの病気は貧血や腎不全に合併することが多く、内科的な疾患がかくれていないか確認する必要があります。
さらに今後パーキンソン病の発症リスクが高いとも言われており、PSG検査を行った結果に応じて、神経内科と
連携してこのような疾患に対する検査や治療もご案内しています。

また、COPDと診断された方の中で、夜間の熟眠感が足りないと感じている方はいらっしゃらないでしょうか?
睡眠時の呼吸状態は通常の診察のみでは見逃されていることも多く、睡眠時の評価も踏まえて呼吸器内科での肺疾
患の管理を行っていくといった対処が大切になってくると考えます。

その他にも、呼吸器疾患が重症な方の非侵襲的な在宅人工呼吸器(NPPV)や、心疾患に伴う無呼吸を生じている
方の評価と治療、神経変性疾患に伴う無呼吸の対処など、睡眠時の呼吸の評価が大切な疾患は多岐にわたります。
多くの方が罹患しているメタボリックシンドローム管理の一助としても大切な側面があります。

気になったら

当センターでは、患者さんのQOLを上げ、重大疾病の発症を予防するという意味でも、当地域での睡眠呼吸障害医療のニーズの高さを実感しています。
この記事を読んで「自分に当てはまるかも!?」と思われた方、検査や入院の必要を感じる患者さんがご来院された近隣の先生方、気になる点がありましたらまずは窓口である呼吸器内科外来へお越しください。