片頭痛予防薬「エムガルティ」
片頭痛の治療は、発作時の症状を軽減、消失させる"急性期治療"と発作の発症を抑制する"予防療法"に分けられます。エムガルティは後者の薬剤で、「頭痛の診療ガイドライン2021」においては最も有効な片頭痛予防薬とされるGroup1に分類されています。
片頭痛の予防薬 エムガルティとは
エムガルティは片頭痛発作が起こるのをおさえるためにつくられた、「抗体医薬」という新しい技術で開発された、新しいタイプの注射薬です。
片頭痛が起こる仕組みとエムガルティのはたらき
片頭痛はCGRPが原因
片頭痛は脳内にCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が増え、それが脳の血管に作用して起こるといわれています。片頭痛患者さんは、発作があるときにCGRPが過剰に放出されています。
エムガルティのはたらき -エムガルティは原因物質をブロックする
CGRPは、片頭痛を引き起こすとされているたんぱく質で、三叉神経から脳内に放出されています。増えてしまったCGRPが血管にくっつくことで片頭痛が起こってしまうのですが、エムガルティは、このCGRPに結合し無力化することで、片頭痛発作の発症を抑えることができます。
効果
エムガルティを定期的投与することによって期待できる効果は、
- 1ヵ月あたりの片頭痛日数が減る
- 頓服薬を使う日数が減る
- 頭痛が続く時間が短縮する
などが挙げられます。
エムガルティの投与方法
エムガルティは初回に2本注射し、2回目以降は1カ月間隔で1本注射します。
初回に2本注射することによってお薬の血中濃度が早く安定した状態になるため、初回の2本でエムガルティを早く届けることが重要です。
2つの投与方法
エムガルティの投与方法は2つあります。
- 月に1回病院を受診し、注射する方法
- 自宅などで、ご自身で注射する方法
ご自身で注射することのメリットは、
- 毎月のスケジュール調整や通院にかかる時間など、様々な負担が減ること
- 投与日においては、時間や場所に縛られることなく注射できるため、自由な時間が増えること
です。
「ご自身での注射」と聞くと、不安な人もいらっしゃると思います。簡単に使えるのか、うまく注射できるか、そもそも注射針が怖い、など思われるのではないでしょうか。
自己注射には、「オートインジェクター」と「シリンジ」の2種類のデバイスがありますが、中でもオートインジェクターは注射の針が怖い、苦手と思っていらっしゃる方も恐怖心を感じることがないよう、針を見たり触れたりすることがない構造になっています。また投与についても、皮膚に当てながら注入ボタンを押し、5~10秒そのまま待つことで針が自動的に動き、薬が注入されます。実際に使用した患者さんに対する調査では、96.8%の方が「注射するのは簡単だ」と回答しました。
エムガルティの副作用(よくみられる副作用)
エムガルティでよくみられる副作用は、注射部位反応です。
注射した部位(お腹、太もも、腕、お尻)に痛み、発赤、かゆみ、内出血や腫れなどが生じます。多くの場合、注射した日に出現し、数日以内に焼失します。その他の副作用としては、皮膚のかゆみ、じんま疹、発疹なども報告されています。
エムガルティの薬剤負担
3割負担の方で1本12,800円(約430円/日)です。
※上述のとおり、初回のみ2本投与となります。
片頭痛患者さんは、「仕事に集中できない」、「次に来る発作が不安になる」など、片頭痛のある日も無い日も、さまざまな支障と向き合う毎日を過ごしていらっしゃることと思います。片頭痛を意識する時間を今よりも減らし、「片頭痛が起こるのは当たり前」ではない日常を実現するためにも、お気軽にご相談ください。