ドクターインタビュー

DOCTOR INTERVIEW

横断的な診療で、一人ひとりに最適な低侵襲治療を。

消化器病センター / 外科 / 内視鏡室

相浦 浩一センター長
内視鏡室 室長

koichi aiura

総合的な消化器疾患治療と内視鏡検査

当院の消化器病センターは2003年の開設以降、消化器疾患に対してより質の高い医療を提供するために、内科と外科がこれまで以上に連携して迅速かつ適切な診療を行う体制を整えています。

消化器疾患とは食道・胃・十二指腸・肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・小腸・大腸・肛門などの臓器に発生する病気です。当センターではこれらの消化器疾患全般の総合的な専門治療を行っており、消化器救急医療においても、消化管出血や急性腹症などに24時間365日対応しています。

とりわけ注力している消化器の内視鏡検査・治療は年間約5,000件の症例を手掛けており、疾患の早期発見・治療に取り組んでいます。

近年は内視鏡を活用した早期がんの診断と治療が進んでおり、消化器疾患の診療は日々変化しています。内科、外科どちらの診療科を受診するか迷うことがあるかと思いますが、病状に応じて最適な治療を提供できるように努めています。

内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)と超音波内視鏡(EUS)

私は胆道・膵臓疾患を専門としています。今後は膵臓と胆道の内視鏡に関わる患者さんをより積極的に受け入れ、診療していきたいと考えています。

透視検査の1つにERCP(内視鏡的胆管膵管造影)というものがあります。内視鏡を口から入れ、胆管や膵管に直接細いチューブを介して造影剤を注入し、胆のうや胆管、膵管の異常を詳しく調べる検査です。この検査により胆管結石・膵石・炎症性/悪性胆管狭窄などの診断を行います。 造影検査に引き続いて、治療も行うことができます。内視鏡を用いて胆管結石を取り除き、狭窄した箇所にステントを挿入するなどの治療方法です。ERCPに関して、殆どの治療を当センターで行うことが可能です。

超音波内視鏡(EUS)も私が得意としている検査のひとつです。超音波内視鏡とは胃カメラに超音波の機械を組み合わせた内視鏡で、患者さんが受ける負担は通常の胃カメラとほぼ同程度です。この内視鏡を使用することで胃の壁から膵臓・胆のう・胆管等に向けて超音波を当て、体の表面から超音波を当てるよりも詳細に観察できます。通常の胃カメラでは胃や十二指腸の表面しか観察できませんが、超音波内視鏡では消化管の壁の中にある病気も観察できます。 超音波内視鏡は一般的に普及している検査ですが実際に行っている病院は多くありません。専門性の高い検査のため、当院では超音波内視鏡だからこそできる診断を積極的に行っていきたいと考えています。

膵臓がんと胆のう疾患の早期発見

現在最も注目されている疾患は膵臓がんです。日本の膵がん患者は30年前の10倍に増加しており、肺がん・大腸がん・胃がんに次いで4番目に多いがんとなっています。この病気は症状が現れにくく、進行が早いため発見された時点ですでに進行が進んでいるケースも多く見られます。膵臓がんは非常に治療が難しい病気ですが、早期かつ小さな段階で見つけることができれば治療の成功率が高まります。膵臓がんの5年生存率は10%前後と非常に低いです。しかし1センチ以下の小さな膵臓がんを早期に発見することができれば、5年生存率は80%ほどに向上します。 しかし、1センチ以下の膵臓がんを見つけることは難しく、CTやMRI・PETなどの画像診断では十分に判断できません。このような場合に最も感度が高いのが超音波内視鏡です。膵臓がんの高リスクな症例に対して積極的に超音波内視鏡を行い、早期発見に努めたいと考えています。

超音波内視鏡は胆のうの腫瘍にも有用です。例えば胆のうにポリープが見られる場合、通常はポリープが10ミリ以上あれば手術が検討されます。超音波内視鏡を用いて詳細に検査することで、ポリープの形状や内部構造を詳細に確認でき、手術の適応をより精密に判断できます。 このように、超音波内視鏡はいくつかの疾患において非常にメリットがあるため、今後も当センターでは積極的に導入・活用していく予定です。

複数のリスク要因を持つ患者さんへの積極的な検査

超音波内視鏡検査の対象となる患者さんは、主に「高リスク群」と呼ばれている方々です。しかし、膵臓がんのリスクを特定することは難しい側面があります。

例えば、糖尿病を持つ患者さんもリスクの高いグループに含まれますが、糖尿病を患っていらっしゃる方は多く存在し、さらなる高リスクの患者さんを特定することは容易ではありません。ただし糖尿病患者さんの中でも、発症してから2年以内の場合、すい臓がんリスクが高いとされています。 また、中でも最近注目されているのは家族性膵がんです。親・兄弟姉妹・子供に膵がんの発症歴が2人以上いる場合を家族性膵がんと呼び、リスクが通常の人よりも6倍以上に高まることが知られています。さらに、慢性膵炎が診断されてから4年以内の場合、通常の人よりも約16倍高いリスクがあると言われています。

主すい管が拡張している場合や、膵のう胞と呼ばれる状態もリスク要因の一つです。すい管内乳頭粘液性腫瘍という膵のう胞性疾患の症例では、年率1%でがん化する可能性があるとされています。膵がんが併存する可能性も高いため、定期的なフォローアップが重要です。

以上より、単一のリスク要因だけでなくリスクファクターを複数持つ患者さんを、まずは積極的に検査の土台にあげることが大切です。これにより小さな膵臓腫瘍や異常を早期に発見し、治療の機会を増やすことができます。

診療科の垣根を超えた、総合的な診療

当センターの内視鏡室は、患者さんの疾患を横断的に診る役割があると考えています。内科だけ、外科だけの視点で考えるのではなく、患者さんにとってどのような治療がベストなのかを検討しています。

週に一度、内科・外科・放射線科・病理診断科のスタッフで合同カンファレンスを行い、患者さん一人ひとりに最適な診断と治療を提供できるよう、従来の診療科の垣根を超えて連携しています。

外科医としての魅力

私が医師の道を選んだきっかけは、医師の家系ではなかったのですが、父親からずっと「赤ひげ」のような医師になりたかったという話を聞いていたことが影響していると思います。特に医者になるように強制された訳ではないですが、父の話を聞いて医者になりたいと潜在的に意識するようになりました。

加えて、大学時代に、膵臓外科の名医と称される先生から授業を聞き、感銘を受けた経験があります。その先生の指導と情熱に触れ、さらに、研修医・専修医時代にもその膵臓外科名医にシンパシーを感じた複数の外科医との出会いがあり、外科の中でも膵臓を専門に選ぶきっかけとなりました。医療はどの分野も大切ですが、外科医として知識・人間性・技術を駆使して患者さんに医療を提供することが、私にとって大きな魅力となっています。

腹部症状に関するご相談をお待ちしています

私の専門は膵・胆道ですが、それ以外の腹部症状に関しても何か気になることがあれば、お気軽に声を掛けていただきたいと思っています。

上部と下部の内視鏡検査に関しては直接外来予約が可能ですが、膵・胆道に関する検査については外来での診察が必要です。その後、必要であれば検査を進めていきます。ERCPの場合は入院が必要になりますが、超音波内視鏡検査は外来で手軽に受けることができ入院は不要です。敷居は低いのでリスクがあると感じる場合でも、まずはご相談いただきたいと思います。患者さんの健康を守るために、お手伝いさせていただきます。

相浦 浩一

消化器病センター センター長・内視鏡室 室長

経歴
  • 東京都出身
  • 1984年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 1993年 慶應義塾大学病院 内視鏡センター
  • 2011年 川崎市立川崎病院 外科/内視鏡センター
  • 2023年 日本鋼管病院 消化器病センター センター長 内視鏡室 室長
専門分野
  • 消化器外科
  • 膵・胆道疾患
資格
  • 日本外科学会専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会専門医・指導医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
  • 日本肝胆膵外科学会高度技能指導医
  • 日本胆道学会認定指導医
  • 日本膵臓学会認定指導医
  • 消化器がん外科治療認定医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本肝胆膵外科学会認定肝胆膵外科高度技能指導医
  • 身体障害者福祉法15条指定医(ぼうこう又は直腸機能障害、小腸機能障害、肝臓機能障害)
  • 難病指定医