ドクターインタビュー

DOCTOR INTERVIEW

どんなに小さな異常でも早めの受診を

人間ドック・健診センター

木口 一成センター長

KAZUSHIGE KIGUCHI

産婦人科医から内科健診へ

私は1971年に慶応義塾大学医学部を卒業し、産婦人科医(婦人科腫瘍専門医)として約40年、さまざまな病院に勤務してまいりました。定年退職後、東京都予防医学協会という検診センターで婦人科がん(子宮)検診を担当しました。この間、国立がん研究センターが主催する行政検診における精度管理の在り方についての基礎知識を学ぶため、 がん検診従事者講習会などにも積極的に参加し、 同時にがん検診以外の通常健診・人間ドック健診にも興味を持ちました。2014年より日本人間ドック学会に入会し、女性のための健診・予防のあり方検討委員会、検査安全実施基準作成委員会委員として、健診をいかに正確に安全に施行するかについての議論を深めてきました。

2022年からは、当院のドック・健診センターで内科健診を担当しています。医師として診療の原点に立ち返り、多くの受診者の皆様の病気の予防や早期発見、健康維持のために尽力したいと考えています。

人のために尽くすという価値観に触れ

私が医師の道を選んだ理由は、中学時代に読んだアルベルト・シュバイツァーの『わが生活と思想より』という著書がきっかけです。シュバイツァーが掲げた「自分のためではなく、人のため、苦しむ人のために役に立つ仕事」の理念は私の心に深く響きました。彼は38歳でアフリカへ渡り、人々のために医療活動を始めました。そして90歳で亡くなるまで、アフリカの過酷な環境の中で現地の医療に身を捧げています。

私が心を打たれたのは、二つの理由からです。一つは、人のために直接奉仕するという姿勢。もう一つは、生命への畏敬です。人のために尽くすという価値観は、私が尊敬する産婦人科医師の父からも受け継いだものかもしれません。私は永年にわたり医療に携り、不器用ですがひたむきな姿勢で患者様に対し親切に対応してきました。医者という職業が自分にとって天職であると信じ、今後も日々健診業務に精進してゆくつもりです。

地域社会の健康を支え続ける

当センターは、1970年の開設以来、54年間にわたり地域社会の皆様の健康を支える役割を果たしてきました。人間ドック健診施設機能評価認定施設として高度先進医療機器を備えています。専門資格を持つ検査技師による検査を実施しており、人間ドック認定医や各科の専門医(内科・眼科・脳外科・婦人科・乳腺科・放射線科など)が診断にあたっています。

当センターでは、「すべては受診者さんのために」を基本理念にしています。受診者さんが最初に出会う受付では常に笑顔で接し、明るい声でお迎えすることを大切にしています。受診者さんが必要な健診を短時間で受け、結果を正確に把握できるよう、各検査科との連携をより密に行うことで諸作業の効率化に努めています。

幅広いニーズに対応する当センターの取り組み

受診者さんがストレスなく健診を受けられるように配慮も怠りません。 具体的には毎月第2土曜日に受診日を設け、平日に時間を取り難い方々にも対応しています。毎週火曜日と金曜日に実施する婦人科健診では女性医師が対応し、乳腺エコーやマンモグラフィ検査は女性技師が担当しています。診察室は個室化し、女性受診者の検診時には女性スタッフが同席するといった配慮も行っています。

その他にも、自動販売機を利用した無料の飲料水の提供、昼食(充実コースでは無料)はセンター内、院外の2か所から選んでいただき召し上がっていただくことができます。

受診予定日の3週間前には、検査に関する注意事項や詳細な説明を郵送することで、受診者が検査当日に安心して臨めるようサポートしています。特に大腸鏡検査のような事前準備が必要な検査では、受診前に来院していただき、検査の説明や必要な薬品の配布を行うことで、検査への不安を軽減しています。

高齢の方や障害をお持ちの方々に対しては分かりやすい説明を心掛け、車椅子の事前準備などの対応を行っています。日本語が分からない受診者の方には、英語・韓国語・中国語・ポルトガル語・フィリピン語の問診表を用意し、必要に応じて通訳の方にも同席していただいています。

受診者全員に診療全体に関するアンケート調査を実施し、その結果をもとに毎月の委員会で討論、業務改善に繋げています。

以上に述べた受診者さんへの細やかな配慮が実を結び、おかげ様で皆さまから高い満足度の評価をいただいています。

丁寧な説明で受診者さんの健康をサポート

当センターでは、検査結果の説明と保健指導を検査当日に行っています。健診センターの診断医が問診や内科診察の後、身体計測・血圧測定・採血・尿検査・心電図・腹部超音波・胸部X線・上部消化管検査などの結果について、健診当日のデータを元に懇切丁寧に説明して保健指導を行います。その後、専門医による診断結果の確認を行い、2〜4週以内に結果報告書を郵送しています。

保健指導に関しては人間ドックアドバイザー資格を有する保健師が中心となり、検査結果に基づき、生活習慣の聞き取りやアドバイスを行い、パンフレットを用いて分かりやすく指導しています。患者さんの健康維持や疾患予防のための適切なアドバイスを提供し、健康への理解を深めていただけることを心がけています。

確実なフォローアップ体制と総合病院との連携

悪性疾患や重症化予防のために要治療と判定した受診者さんには、確実なフォローアップ体制を整えています。健診の結果、精密検査や治療、もしくは3か月、6ヶ月後の再検が必要と判断された受診者さんには、フォローシステムを必要に応じて導入し、検査や治療、再検を確実に行うと同時に、フォローを徹底するために厳格な受診勧奨マニュアルに従い、確実な成果を挙げています。

当センターは総合病院を併設していますので、必要に応じて精密検査や専門的な診療を受けられる体制が整っており、至急を要する場合には即日対応も可能です。他施設への紹介も丁寧に行っております。

脳健康維持に向けたMVisionシステムの導入

当センターでは、時代に即応した検査法の導入を積極的に検討し、医師および職員への教育体制を整えています。例えば、人生100年時代に対応するために脳の健康維持に焦点を当て、新たな脳の健康に関するオプション検査としてMVisionシステムを導入しました。このシステムは脳MRI画像をAI自動解析により数値化、脳の血管性変化を知ることで脳の健康状態を理解し、生活習慣の改善に繋げることができます。

また、全職員を対象とした必修講習会やeラーニングを通じた講義の実施、関連学会への積極的な参加や発表論文の作成、人間ドック関連のニュースについての共有や討論など、医師および職員の教育・情報共有にも力を入れています。

小さな異常も放置せず、早めの治療が大切

どんなに小さな異常でも、放置してしまうと大病に繋がる可能性があります。生活習慣も同様です。健診での数値が悪かったけれども今まで通りの生活をしていたり、治療を開始せずに放っておいたりすると慢性的な病気や不治の病に進展してしまうこともあります。

健診を受けること自体が怖く、嫌だと感じる方もいらっしゃると思います。血圧が高いと指摘されながらも、毎年健診を受けていることで安心してしまい、治療を受けようとしない方がいますが、もう治療しないといけない段階です。慢性的な病気になってしまってからでは遅いのです。生活習慣病と言われる段階でいち早く適切な治療を受けることが重要です。 健康診断は自分の健康状態を知るための大切な機会です。異常が見つかった場合はそれを無視せずに、早めに医療機関を受診してください。

スタッフ構成(2024年現在)
医師 25名(常/非常勤)
看護師(保健師含む) 12名
診療放射線技師 20名
臨床検査技師 27名
事務職員 9名
2023年度 健診受診者数 実績
人間ドック 1917名
専門ドック 35名
健診(がん検診を含む) 4372名

木口 一成

人間ドック・健診センター センター長

経歴
  • 1971年 慶應義塾大学医学部卒業
  • 1971年 慶應義塾大学医学部付属慶應病院産婦人科入局
  • 1978年 米国イリノイ州シカゴ大学細胞病理研究室( Visiting Post Doctorial Fellow として留学 )
  • 1980年 慶應義塾大学医学部付属慶應病院 産婦人科診療科医長
  • 1986年 慶應義塾大学医学部付属慶應病院 産婦人科専任講師
  • 1995年 慶應義塾大学医学部付属慶應病院 産婦人科助教授
  • 1995年 聖マリアンナ医科大学医学部付属病院 産婦人科助教授
  • 2006年 聖マリアンナ医科大学医学部付属病院 産婦人科教授
  • 2011年 聖マリアンナ医科大学医学部付属病院 産婦人科特任教授
  • 2012年 聖マリアンナ医科大学医学部付属病院 産婦人科客員教授
  • 2012年 公益財団法人東京都予防医学協会検査研究センター長
  • 2022年 医療法人社団こうかん会日本鋼管病院ドック・健診センター長
  • 2022年 公益財団法人東京都予防医学協会学術顧問
資格
  • 日本人間ドック学会認定医
  • 日本人間ドック学会遺伝的検査アドバイザー
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本産科婦人科学会専門医
  • 日本婦人科腫瘍学会専門医
  • 日本臨床細胞学会専門医