臨床工学科

臨床工学科

臨床工学技士とは

1989年に「生命維持管理装置の操作および保守点検」を業として誕生した医療の国家資格を有する技術者です。
英語でClinicalEngineerやMedeical Engineerと記されることから、CEやMEと呼ばれることもあります。

様々な医療機器は、機器の構造や原理そして正しい使用方法を熟知することで、はじめて治療に最大の効果を発揮することができます。これら機器の操作や保守・点検にあたっているのが臨床工学技士です。

当科は2002年8月に設立されたばかりの院内で最も新しい診療支援部門で、現在11名の臨床工学技士が業務にあたっています。

業務内容

私たちの業務は大きく分けると「臨床業務」と「医療機器の保守点検業務」になります。
臨床業務は「血液浄化業務」、「人工呼吸器業務」、「ペースメーカー業務」、「消化器内視鏡補助業務」、「手術中における自己血回収術」を。保守点検業務では「生命維持管理装置(麻酔器・人工呼吸器・透析装置)の使用前点検や透析装置の定期点検」、「輸液ポンプ・シリンジポンプの使用後点検・定期点検」などを行っています。
また、院内の職員に対して「医療機器用消耗品の中央管理化や医療機器の正しい使用方法や管理などに関する勉強会」を開催し、治療に関して様々な部署の職員が知識を共有してもらえるよう努めています。

血液浄化業務

糖尿病患者さんの増加に伴い、合併症で腎不全に至る方が近年増加しています。腎不全になると腎臓を移植するか透析を受けなければ延命はできません。現在、全国で血液透析を受けている方は30万人を超えており、当院でも約60名の方が透析センターにて血液透析治療を週3回、1回3~4時間かけて受けています。
私たち臨床工学技士も医師・看護師と共に透析療法を行っています。具体的には人工腎臓の組み立て・洗浄・患者さんから血液を抜くための針の穿刺・また治療終了時に患者さんへ血液を戻す操作を担当しています。
腎不全以外の病気にも、血液中から病因物質を取り除く血液透析に似た治療があります。高脂血症や潰瘍性大腸炎等の患者さんに施行するもので、これらの患者さんへの血液浄化療法も担当しています。

人工呼吸器業務

人工呼吸器は、「脳の呼吸中枢に障害が起きたり、頸髄損傷・重症筋無力症等により呼吸筋が麻痺したために自力では十分な呼吸が行えなくなった場合」・「肺疾患によって血液への酸素供給や炭酸ガス排出が不十分となった場合」・「呼吸に多大な労力を必要とし、患者さんの消耗が著しい場合」といった、自分の力で十分に呼吸が行えなくなった患者さんのために、電力やガスの圧力を利用して、機器の力を借りて自動的に呼吸の補助を行います。
最近ではモニター装置・警報装置・換気パターンの選択など、複雑な機能が内蔵されているものが多く、高度な専門知識が必要ですが、人工呼吸器を必要とする患者さんに即時対応できるよう、保有している人工呼吸器に対し、回路等の準備点検等を行っています。
また、患者さんに装着されている間は、毎日作動状況等を点検し記録に残しています。

ペースメーカー業務

心臓は普段、1日に約10万回の収縮と拡張を繰り返しています。これは洞結節という心臓の一部位から発生する電気刺激により作られ、毎分約70回の鼓動のリズムをも作っています。しかし、これらに異常が起こると、刺激が上手く伝わらず必要な脈拍数をつくることができなくなります。
このような場合にペースメーカーが埋め込まれます。ペースメーカーは、電池と刺激発生・感知回路と心電図を伝えるためのリード(導線)でできた小さな人工臓器で、働きが低下した洞結節や房室結節などの代わりに電気刺激を心筋に作ったり伝えたりして、体に必要な脈拍を作り出しています。ペースメーカーを体内に埋め込む時や定期的なチェック・機能確認・設定値の変更をする時にプログラマーという機器を用いるのですが、これらの操作も医師と連携して行っています。

内視鏡業務

消化器内視鏡検査(胃カメラや大腸鏡といった方がピンとくるでしょうか?)に際して、医師の治療の補佐を行います。
また、使用後の内視鏡の洗浄や点検も担当しています。

保守点検業務

生命維持管理装置(麻酔器・人工呼吸器・透析装置)の保守点検や正しい使用方法への啓蒙活動を行ないます。
麻酔器には麻酔に必要な酸素や麻酔ガスを体内に届けるチューブ、麻酔作用で弱まる自発呼吸を手助けする人工呼吸器、モニターなどが付いており、安全に手術が施行されるよう、手術前の早朝から機器の点検を行います。

輸液ポンプ・シリンジポンプの点検

病院内では注射液を患者さんに正確に投与するために約100台の輸液ポンプ・シリンジポンプが使用されています。これらのポンプを効率良く使用するための管理もしており、必要な部署には何時でも貸し出せるよう、常に点検済みの機器を準備しています。
使用後の機器は、都度清掃・点検して備えます。また、電気製品である医療機器に電気的な不具合が生じないよう、専用の測定装置を使用して電流の漏れを測定し、機器が正常な状態であることを確認しています。

病院で携帯電話を使ってはいけないのは本当?

携帯電話による電磁干渉(機器が発生するノイズによって、他の機器に障害が発生する事)が原因と思われる医療機器の誤作動は、1990年代初頭から報告され始め、中でも心臓ペースメーカーへの影響については多くの事例が発生しました。患者さんへの影響は、動悸・めまい・失神の前駆症状などです。
最近では医療機器メーカーの対応により、新しい製品ほど電磁干渉を受けにくくなっていますが、5年以上前に作られた製品の中には電磁波により誤作動しやすいものもあります。
また、植込み型ペースメーカーの電池寿命は長いもので10年以上あるために、古い機種を装着している患者さんも少なくないので注意が必要です。また、ペースメーカー以外にも「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」等の医療機器にも、携帯電話による電磁干渉の被害が報告されています。