神経内科

診療科のご案内

当科では、川崎市の地域における神経内科の病気の患者さんの診断や治療を行っています。

なかでも、アルツハイマー型認知症の患者さんだけでも当院に年間約450名の方が外来受診および入院をされており、そのうち約3分の2が神経内科の外来で通院治療をされています。

神経内科の病気は他の科に比べ多様性に富んでいるため、それぞれの病気、患者さん個々の状態に応じて、的確な診断と最良の治療を行うことを心がけています。

神経内科医の重要な仕事は、どこに病気があるのかを見極めることです。
その上で、神経や筋肉に問題があれば神経内科で治療を行い、骨に異常があれば整形外科、手術が必要な場合は脳神経外科、精神的なものは精神科にご紹介します。

最初にどの科にかかるか分からない場合は、前もって電話で相談されるか、初診受付で聞いてみて下さい。

もし病気の診断のために当院で行えない特殊な検査が必要な場合には、近隣の病院あての紹介状を迅速に作成します。

対象疾患

神経内科は脳や神経の病気の診断と治療を行い、取り扱う病気は以下のようなものがあります。

神経内科で取り扱う病気

認知障害

もの忘れと認知症

『もの忘れ』を起こす病気には、「アルツハイマー型認知症」「前頭側頭型認知症」
「レヴィー小体型認知症」「正常圧水頭症」「血管性認知症」などがあります。

認知症とは、一度獲得した知的機能が病気などを原因として、全般的に機能が低下して社会生活や日常生活に支障をきたす状態と定義されています。初期は記憶障害だけのことが多いですが、症状が進行すると、記憶や失見当識以外にも、周辺症状(BPSD)がみられることがあります。

周辺症状の代表的なものとして、妄想・幻覚・徘徊・暴言・暴力・不安焦燥・抑うつなど様々な病気や病態が含まれ、家族の対応によっても症状の現れ方が異なります。
また、正常圧水頭症や高アンモニア血症のように治療法が異なる病気が紛れていることもあります。

「もの忘れ外来」を受診してみましょう

アルツハイマー型認知症は認知症の原因で一番多い病気にもかかわらず、完全な治癒をすることは現在できませんが、一時的に症状を改善させる内服薬はあり、それにより日常生活でできることを増やしたり、介護を減らしたりすることが可能となります。

治療にはご家族の方の協力が必要不可欠であり、状況によっては地域の開業医の先生と協力して治療することもあります。

認知症を早い段階で見つけて治療することは患者さんにとって大事なことですが、介護している方の負担をとる意味でも重要なことです。また、将来症状が進行したときの施設入所を先延ばしにできることで経済的なメリットもあります。
心配なことがあれば早めに受診することをお勧めします。

当院では認知症の方のデイサービス(通所介護)をおすすめしています。また、介護保険の申請に必要な主治医意見書は迅速に作成することを心がけています。デイサービスは施設によって受けられるサービスや雰囲気が違うため、見学に行き希望に添った施設を探しましょう。

また、当科では認知障害に関する専門外来「もの忘れ外来」を設置しています。
予約制になりますので、外来担当表 をご覧になり、お電話にて事前にご予約のうえご来院ください。

画像で見るアルツハイマー型認知症

CTやMRIなどの形態画像で萎縮を確認できる前から、脳内では異常な蛋白がたまるような変化が進行していることが多々あります。
これらは脳機能画像によって血流や代謝の低下部分を観察することにより確認ができます。

つまり、形態画像よりも早期段階で発見できるのです。

当科では脳機能画像としてSPECT(核医学検査)を用いており、放射性医薬品として99mTc-ECDを使用しています。
脳形態の個人差をなくしたうえで画像統計解析を行い、側頭頭頂葉・後部帯状回・楔前部の血流低下の有無をみて、「アルツハイマー型認知症らしさ」を確認しています。

下図はもの忘れを主訴に来院された50歳代の患者さんの頭部MRIです。
アルツハイマー型認知症に特徴的な海馬の萎縮(丸で囲った場所)の徴候は見られません。

しかし下図のSPECT検査では頭頂葉の血流低下が目立ち、初期のアルツハイマー型認知症が疑われます。

なお、レビー小体型認知症の場合は後頭葉で血流低下を認めることがあります(下図)

後方から

MCI(軽度認知障害) 

MCIは、日常生活を送るうえで支障はないが「記憶」「判断」「行動」などの認知機能のいずれかに支障が生じているような状態で、おおまかに言えば認知症になる一歩手前の境界線にあると考えられます。
ただし、MCIは認知症の初期症状ではなく、認知症の兆候が見られるという状態のことです。

具体的な症状としては、次のようなものがあります。

  • 知人や知っているはずの人の名前が思い出せない
  • 「あれ」や「それ」などの単語を使って話すことが多くなった
  • 最近経験した事を思い出せない
  • 日時を間違える
  • 料理の手順を間違えたり手間取るなど、作業の段取りが悪くなった
  • 無気力になることがある

このようなことが最近多くなったと感じるようであれば注意が必要かも知れません。

先にお話したようにMCIは認知症になるかもしれないという前兆です。
放置していると徐々に症状が進行して、やがては認知症になってしまうかもしれません。
「生活に支障がなければ取り敢えず大丈夫」そう考えている方は見直してみましょう。

MCI(軽度認知障害)の検査

問診と血液検査、画像検査(MRI、脳血流シンチ※)を行います。
また、状態によっては AI(人工知能)を用いた海馬体積や詳細な脳機能の検査を行うこともあります。

※ 核医学検査(ラジオアイソトープ)検査:
この検査による脳血流の評価は早期の軽度認知障害(MCI)や
アルツハイマー型認知症の診断や認知症の進行予測に効果がある

高齢者の運転免許更新に係る診断

近年、認知症の方の交通事故が増え、社会的に大きな問題となっています。
一部の方は、運転免許を更新する際に道路交通法により、診断書の提出を義務付けられています。
これらについて、診断と定められた認知機能検査※、診断書の作成発行を「もの忘れ外来」にてお受けしています。

※ HDS-R(長谷川式認知症スケール および MMSE(ミニメンタルステート検査)

その他の主な症例

脳卒中

急性期から慢性期までの脳卒中(脳梗塞、脳出血など)の診断・治療を行ってます。
(超急性期の脳梗塞や外科的治療の必要な脳出血・くも膜下出血を除く)

入院治療では患者さんに応じた検査と適切な治療を行い、可能であれば早期からのリハビリテーションも
行います。
患者さんが在宅に戻れる可能性があり条件を満たす場合は、回復期リハビリテーション病棟を有する病院へご紹介し、リハビリを継続することもあります。

外来では脳卒中を起こされた方の再発予防のための検査や治療を行います。
また、脳卒中を起こしたことがなくても、「高血圧」・「高脂血症」・「糖尿病」・「心房細動」・
「喫煙習慣のある方」など、将来脳卒中を起こすリスクの高い患者さんには積極的に治療を行います。

「内頚動脈狭搾症」などで治療の必要な場合、血管外科の医師と診療を行います。

頭痛

「頭痛」はとても訴えの多い症状であり、その原因の病気を正しく診断するための問診・診察、検査を行います。
「くも膜下出血」のような入院が必要な重大な病気なのか?、「片頭痛」のように外来で治療できる病気なのか?見極めることが重要です。
検査では採血検査、頭部CT・MRI、脳波などを行います。外来では「片頭痛」、「群発頭痛」、「緊張型頭痛」、「薬物乱用頭痛」、「三叉神経痛」、「後頭神経痛」の患者さんが多く、まれに「脳出血」や「脳腫瘍」の方がおられます。

患者さんにとってはどの頭痛も悩ましいものですが、特に頻度が高いのは「片頭痛」です。
片頭痛は日常生活に影響を及ぼす病気であり、強い頭痛で、音や光に敏感になり、吐き気を伴ったりして、
数時間持続します。

当科の外来では、片頭痛に対する正しい服薬管理・頭痛予防・生活管理についてアドバイスを行っています。
一方で、鎮痛薬を頻繁に摂取しすぎると「薬物乱用性頭痛」になる可能性があります。
3ヵ月以上の期間、定期的に10日/月 以上トリプタン製剤を摂取したり、
1ヶ月に15日以上単一の鎮痛剤を服用する場合は、薬物乱用頭痛の可能性があります。

外来受診のうえ医師に相談して下さい。

片頭痛予防薬「エムガルティ」について

てんかん

「てんかん」は患者数が多く、日本では人口の約0.8%にあたる約100万人の患者がいると言われています。
当科では、外来または入院にて「てんかん」の治療・診断を行います。
採血検査・脳波・頭部MRIなどの検査を行い、患者さんの病態に応じた治療を行っていきます。
また、内服継続の意義・規則正しい生活・飲酒を控えるといった教育的な指導も致します。
妊娠中の治療についても適宜相談に応じています。

パーキンソン病

「パーキンソン病」は

  • 静止時振戦(手のふるえ)
  • 強剛(関節が固くなること)
  • 動作緩慢・姿勢反射障害

などの運動症状を特徴とする進行性の病気で、
自律神経障害(便秘など)、うつ・睡眠障害・認知症などを合併することもあります。
日本では、中高年の方に起こりやすく、約15~18万人の患者さんがいると推定されています。

当科では、パーキンソン病に対して正しい診断のための検査や患者さんにあわせた治療を行っています。
頭部MRI・MIBG心筋シンチグラム・脳血流SPECTなどの検査を行い、
L-ドパ製剤・ドパミンアゴニスト・モノアミン酸化酵素B阻害薬・COMT阻害薬・アマンタジン・
ドロキシドパ・ゾニサミドなどを、症状に応じ組み合わせて治療を行います。

また、外来でリハビリ治療を行い運動機能の維持に取り組んでいます。
脳深部刺激療法という手術療法で改善が見込まれる場合は、日本医科大学脳神経外科などと連携して
治療を行うケースもあります。

パーキンソン病の早期診断について

脊髄小脳変性症

歩行時のふらつき・手の震え・ろれつが回らない等を症状とする進行性の病気で、
日本では「脊髄小脳変性症」の患者さんは3万人以上いると言われています。
これらに対して、外来で、難病申請をしてセレジスト(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体)を使ったり、筋肉のつっぱり・めまい感など症状に応じて治療を行います。

個人差の大きい病気ですが、飲み込みができない場合は嚥下の評価を行い、リハビリなども行ないます。